(簡単な前書き)
 第1話「いくつあればいいの?」では、たくさんの式を使ってしまいましたが、今回はできるだけ、図を使ってお話ししようと思います。
 説明に用いた図とグラフの作成に当たっては、第1話と同じく、関数グラフソフト GRAPES 6.02a を用いました。
 それでは、なるべく気軽にお読み下さいますよう。
Altair





  第2話 見た目はちがうけど

 第1話の最後で書いていた「見落とし」が何だったのか、お読みになった皆さんはお気づきになったでしょうか?
 その「見落とし」を示す、第1話の一文をここに引用します。

  「3つの点が1直線上に並んでいない場合は、必ず曲線を描くことになります。」

 第1話での結論は「1つの二次曲線を決めるためには、二次曲線上の5つの点を決めればよい」ということでした。
 ところで、5つの点のうち、いくつかの点が直線上に並ぶ場合はどうなるでしょうか?
 まず、5つの点の並び方から考えてみたいと思います。
 2つの点については、それらを通る直線が1つあるのは明らかですから、点の並び方は次の4通りを考えればよいことになります。

 (1) 5つの点すべてが1直線上に並ぶ場合
 (2) 4つの点が1直線上に並び、残り1つの点はその直線上にない場合
 (3) 3つの点が1直線上に並び、残り2つの点を結ぶ直線がその直線と交差する場合
 (4) 3つの点が1直線上に並び、残り2つの点を結ぶ直線がその直線と平行になる場合

 特に(1)の場合については、5つの点すべてを通る直線を考えるほうが自然ですね。
 「ちょっと待って。第1話で言っていたことと話が違うじゃない?」と思われるでしょうから、ここで少しだけ、すべての二次曲線を表す式(一般式)を出すことにいたします。

+Bxy+C+D+E+F=0

(第1話から続けてお読みいただいている方なら、この式を出しても大丈夫でしょう。)
 この式の中にある A,B,C,D,E,F は、曲線の形を決める定数でした。
 ここで、これらの定数を、A=0,B=0,C=0,D=1,E=−1,F=1 としてみましょう。式の形は次のようになります。

+1=0 →(書き直すと)→ +1

 この式は、グラフを描くまでもなく、直線を表す式だということはお分かりいただけることと思います。
 つまり、すべての二次曲線を表す式には、すべての直線を表す式(D+E+F=0)も含まれており、「直線は二次曲線の特別な場合である」とも言えるのです。
 したがって「5つの点すべてが1直線上に並んだ場合」には「1つの直線が決まる」と考えてよいのです。

 次のようなことも考えることができます。
 二次曲線を表す式の定数を、A=1,B=0,C=1,D=0,E=0,F=0 とした場合は、次の式ができます。

=0 →(因数分解すると)→ ()()=0

 この式を二次方程式として見ると、これが成り立つ答えは、=0 または =0 です。
 ですが、この式を「二次曲線を表す式」として見るならば、この式は、=0 と =0 という2つの直線を表す式が組み合わされた式として見ることができます。
 つまり、「二次曲線を表す式」の中には、「2つの直線を合わせて表す式」も含まれているのです。
 上の式の例では、2つの直線が交差しますが、平行な2直線の場合でも同じように考えられます。
 このことから、「3つの点が1直線上に並んだ場合」の2通りでは、「2つの直線が決まる」ことになります。
 また、「4つの点が1直線上に並んだ場合」には、やはり、2つの直線が通るものとして考えることになります。ただし、決めることができる直線は1つだけで、残り1つの点を通る直線は「自由に決められる」、言いかえると、「決まらない(不定)」ということになります。


 やや難しい補足になりますが、二次曲線と直線との交点は、それらを表す二次式と一次式との連立方程式を解くことによって得られます。
 ここで、クロネッカーの定理 「n次の代数方程式はn個の根を有する」(重根および複素数根を含む) から、二次方程式の根は2個となりますので、二次曲線と直線との交点は2点以下(重根の場合は1点,複素数根の場合は交点がない)ということになります。
 したがって、ある「二次曲線」上の3つ以上の点が1直線上に並ぶ場合には、その「二次曲線を表す式」を「1つまたは2つの直線を表す式」として扱うことになるのです。


 続いて、第1話でお話しした内容から、もうひとつ引用することにしましょう。

「円,楕円,放物線,双曲線は、円錐曲線、つまり、円錐を1つの平面で切った時に、その切り口に現れる曲線として知られています。また、その曲線のグラフをの記号を使った式として表すと、または の二次式(または xy を用いた式)で表されることから、二次曲線と言われます。」

 二次曲線を決める5点を並べることで、1つの直線、交差する2つの直線、または、平行な2つの直線ができる、というならば、そのような直線も円錐の切り口に現れるのでしょうか?
 このことは、図を見ながら考えていくことにしましょう。
 (円,楕円,放物線,双曲線となる円錐の切り口について説明された図は、多くの数学の参考書に掲載されていますので、そちらをごらんいただきたいと思います。)

 まず、円錐とはどのような図形か、ということから見ていただくことにします。
 図−4に示すように、円錐は1つの直線を軸にして、その直線に交差する直線を回転させた時にできる立体図形です。回転させた直線を、円錐の「母線」と言います。





図−4 円錐と母線


 つまり、円錐は無数の直線の集合でもあるわけです。
 したがって、図−5に示すように、1つの母線だけを含む平面で円錐を切れば、そこに1つの直線が現れる、ということになります。(この平面は、「円錐を切る平面」と言うより、「円錐に接する平面」と言うほうがよいですね。)





図−5 円錐の切り口に現れる1直線


 また、図−6に示すように、2つの母線を含む平面で円錐を切れば、そこには交差する2つの直線が現れます。





図−6 円錐の切り口に現れる交差2直線


 1つの直線の場合、そして、交差する2つの直線の場合は意外に簡単に分かりました。
 それでは、平行な2つの直線は、どのような平面で円錐を切れば現れるのでしょうか?

 ちょっと困ったことになりました。
 図−4〜図−6で示したように、円錐のすべての母線は、円錐の頂点で交差しています。
 これでは、円錐をどのように切っても、平行な2つの直線は現れそうにありません。
 残念ながら、この問題は、円錐を見ながら切り方を考えることが難しいようです。

 それでは、最初に戻って考えなおすことにしましょう。
 図−7では、3つの点を1直線上に並べ、残り2つの点を平行な直線上に並べました。
 また、後の説明のために、図−7には1つの円も書き添えました。





図−7 5点と平行2直線


 図−7に円を書き添えたのは、円および楕円では、その中心をはさんで正反対の位置にある2点の接線が互いに平行になるからです。図−7の平行な2つの直線はそれぞれ、円の上下の2点(0,2)と(0,−2)に接しています。
 それでは、図−7の円の両側を引っ張って楕円にしてみましょう。





図−8 平行2直線と楕円(その1)


 図−8にはいくつかの楕円を合わせて描いています。どの楕円についても、平行な2つの直線との接点は、それぞれの楕円の上下2点(0,2)と(0,−2)だけですが、より長く引き伸ばすほど、楕円は2つの直線に近づいていくことが分かります。
 こうなったら、楕円を思い切り引き伸ばしてみましょう。





図−9 平行2直線と楕円(その2)


 図−9を前置きなしに見せられたなら、ほとんどの人が「2つの直線だけで、楕円を描いてないよ」と思うことでしょう。
 表示の必要上、線にある程度の幅があるために、また、図−9は図−8と同じ範囲を示しているために、2つの直線と楕円とが重なってしまいました。
 図−9の楕円は、+62500−250000=0 という式で表され、両端は、=±500の位置にあります。やはり、図−8に示した楕円と同じように、平行な2つの直線との接点は楕円の上下の2点(0,2)と(0,−2)だけですし、両端に視点を移せば、2直線と楕円は離れています。
 と言ってみても、図−9の楕円の見た目はどうでしょう? 平行な2直線とほとんど変わらないように見えます。
 また、楕円をさらに引き伸ばすことは自由にできますから、図−9の楕円の両端の位置においても、2つの直線とほぼ重なるように見える楕円を考えることができます。

(1例として、+625000000−2500000000=0 という式を挙げておくことにいたします。これから先の結論は、「極限」の概念を用いて導くこともできるのですが、話が混乱するかもしれませんので、「二次曲線エッセイ」シリーズ終了後に、付記としてまとめたいと思います。)


 楕円を限りなく引き伸ばしたならば、それはどのような図形になるのでしょうか。
 ここで、平行な2直線はどのような図形と言えるのか、ということも考えてみたいと思います。
 平行な2直線は、次のように説明することができます。

  「平行な2直線は、『どこまで遠くに行っても交差しない』2直線である。」

 この文を、次のように読みかえることによって、この問題に1つの答えを出すことができます。

  「平行な2直線は、『限りなく遠く(無限遠点)で交差する』2直線である。」

 平行な2直線が「交差する」という考えに納得できない方もおられると思います。
 ただし、上の文で書いた「無限遠点」とは、「ある位置」のことを表したものではありません。どのような遠い位置を考えたとしても、位置を決めるかぎり、それは有限の位置なのです。
 「無限遠点」は、位置を決めること自体が無意味であり、上の文に書いたとおり「限りなく遠く」のことなのです。
 少なくとも有限の範囲では、平行な2直線が交差しないのは明らかでしょう。
 でも、まっすぐに伸びた線路を見るとき、その2本のレールは『限りなく遠く(無限遠点)で交差する』ように見えませんか?

 そろそろ、話をまとめていくことにしましょう。
 楕円を限りなく引き伸ばした図形。それは次のように考えることができます。

  「限りなく遠く(無限遠点)に両端がある楕円は、平行な2直線と等しい。」

 つまり、二次曲線の式によって表される平行な2直線は、楕円の特別な場合と言えるのです。
 やはり、平行な2直線を「円錐の切り口に現れる直線」として考えるのは難しいようですね。
 みなさんはどうお考えでしょうか。
 私は、このことを答えにしたいと思うのですが。

 難しいことばかりを書いてしまいましたが、やっと話にまとまりがつきました。今度こそ、これで一安心。



 …と思っていたのですが、また、見落としがあったことに気が付いてしまいました。
 その見落としの一端については、今回も本文中に少しだけ書いてありますし、円のグラフと円を表す式を並べて見ていたときに気が付いたのですが、ここでさらに話を長引かせることは、やめておきましょう。
 この話は、第3話「どこにあるの?」でまとめることにいたします。
 それではまた。


目次に戻ります。

参考文献
 数学辞典(第3版) : 日本数学会編集,1985年,岩波書店
 現代数学小事典 : 寺阪英孝 編,1977年,講談社