(簡単な前書き)
 このような文章を書いてはいますが、私はその分野の専門家ではないことを、先に申し上げておきたいと思います。
 また、説明に用いたグラフの作成に当たっては、関数グラフソフト GRAPES 6.02a (GRAph Presentation & Experiment System:友田勝久(2002.4.19),大阪教育大学附属高等学校池田校舎) を用いました。
 それでは、気軽にお読み下さいますよう。
Altair





  第1話 いくつあればいいの?

 私は仕事上、文章を書くこととともに、図を描くことが多いのですが、図を描くことの基本は「線を引く」ことです。「2つの点を結ぶ線を引く」ならば、一番簡単な方法は、それぞれの点に定規を合わせて鉛筆を走らせる。これで1つの直線(正しくは、線分)ができます。
 どちらかといえば、曲線を描くほうが難しいかもしれません。2点を通る直線は1つしかありませんが、曲線は無数にあるからです。
 それでは、「3つの点を通る線を引く」 これはどうでしょうか?
 3つの点が1直線上に並んでいない場合は、必ず曲線を描くことになります。
 3つの点をそれぞれ直線で結べば、ある角度で交わる2つの直線が3通り、または、1つの三角形ができます。
 図−1に示すように、3つの点はそれぞれ直線と直線の交点あるいは三角形の頂点となり、そこで線が折れ曲がるわけです。





図−1 3点を頂点とする三角形


 「点と点を直線で結ぶ」ならば、線の引き方はこれだけ。単純ですが物足りません。
 それでは、3つの点は通るけれど、頂点のない「なめらかな曲線」を描いてみることにしましょう。
 どんな曲線を描くことができるでしょうか?
 どんな曲線でも描くことができますね。
 先に適当な曲線を描いてから、その曲線の上に3つの点を打つ。こう考えてみると、無数の曲線を考えることができます。
 このままでは、話の収拾が付きませんので、一番簡単な曲線の一つである、円から話を始めることにしましょう。
 先ほどもお話ししたとおり、3つの点を直線で結ぶと三角形ができます。
 この3つの点を通る円、これは三角形の外接円で、その円の中心を三角形の外心と言います。(三角形の外心は、3つの辺の垂直二等分線の交点です。)
 つまり、3つの点を決めれば、1つの三角形を、そして1つの円を決めることができるのです。図−2には、図−1で示した三角形の外接円を示します。





図−2 三角形と外接円


 その他の曲線についても少し考えてみましょう。
 円をつぶす、または引き伸ばした曲線、楕円があります。楕円は、円の兄弟のような曲線です。円を斜めから見れば楕円に見えますが、楕円も角度を上手に合わせて見れば、円に見えます。
 身近なところでは、投げたものが地面に落ちてくるまでに描く曲線、放物線があります。
 それから、みなさんが一番最初に習う曲線のグラフは、反比例の関係を表すグラフだったことと思います。反比例のグラフをきれいに手で描くのは少し難しかったことでしょう。この曲線は、双曲線と呼ばれます。

 これくらいにしておきましょう。
 それは、ここまでで紹介した曲線、円,楕円,放物線,双曲線は、お互いに親戚のような関係にあるからです。
 これらの曲線は円錐曲線、つまり、円錐を1つの平面で切った時に、その切り口に現れる曲線として知られています。
 また、その曲線のグラフを の記号を使った式として表すと、 または の二次式( または xy を用いた式)で表されることから、二次曲線と言われます。
 これから先は、話を二次曲線にしぼっていくことにします。

 それでは、次のことを考えてみましょう。

 「3つの点を通る二次曲線は、どのようなものがあるか?」

 その答えの1つが図−3です。
 図−2には三角形の外接円だけを示しましたが、図−3には、三角形の頂点を通る円,楕円,放物線,双曲線のグラフと、それらの曲線を表す式を、それぞれ1つずつ示しています。





図−3 三角形と4つの二次曲線

 三角形の頂点の位置  (3,4),(−5,0),(0,−5)
 円(青)を表す式  −25=0
 楕円(緑)を表す式  +2−3+2−40=0
 放物線(紫)を表す式  +3−2−10=0
 双曲線(赤)を表す式  −xy+5=0



 図−3を見て、みなさんはどう思われたでしょうか?
 「3つの点を通る二次曲線、というなら、他にもあるじゃないか」と思われた方もおられると思います。実際、そのとおりです。
 図−3に示した曲線のうち、円はただ1つだけしかありませんが、楕円,放物線,双曲線は、それぞれ無数にあるものの中から、式が簡単で、グラフを重ねた時のレイアウトができるだけ良くなるものを1つずつ選んだだけなのです。
 ここで、問題の考え方を、次のように変えましょう。
 そして、ここからが本題です。

 「1つの二次曲線を決めるためには、いくつの点を決めればよいのか?」

 いくつでしょう?
 3つの点では足りないのなら、4つの点があればよいのでしょうか?
 もう一度、図−3を見ていただくことにしましょう。
 よく見ると、円,楕円,放物線のグラフは =−4,=−3 の点も通っていることが分かります。また、=4,=3 の点を円と双曲線が通り、=7,=2 の点では楕円と双曲線が通っています。
 つまり、4つの点では、1つの二次曲線は決められない、ということになります。
 それでは、いくつの点が必要なのでしょう? 5つでしょうか? 6つでしょうか?
 点を増やして考えるとなると、その点を他の曲線が通るのか、通らないのか、はっきりさせなくてはなりません。
 残念ながら、この問題は、グラフ上の曲線だけを見て答えを出すことが難しいようです。

 それでは、グラフを表す式を手がかりに考えていくことにしましょう。
 図−3で示した4つの式は の二次式ですから、xy のいずれかが式に含まれています。
 このような、二次式のすべてをまとめて表す式は次のように書くことができます。

+Bxy+C+D+E+F=0

(すでに頭痛を感じている方には追い討ちをかけるようなことになるかと思いますが、これ以上難しい式は出しませんので、もうしばらくお付き合いくださいませ。)

 たとえば、図−3の円を表す式は、上の式で、A=1,B=0,C=1,D=0,E=0,F=−25 とした場合、ということになります。
 また、この式の A,B,C,D,E,F は、曲線の形を決める定数であって、 とは関係がありません。ですから、それぞれを同じ割合で変化させても、 で表している曲線の形は変わらないことになります。
記号は1つでも少ないほうがいいですから、 とは関係がない数 F で、式全体を割りましょう。すると、このような式ができます。

+bxy+c+d+e+1=0
(ただし、「Fで割る」ことができるのは、この曲線が、=0,=0 の点を通らない場合です。=0,=0 の点を通るならば、F=0 となりますので、「0で割る」という数学のルール違反をすることになってしまいます。ですが、F=0 の場合も、これからお話しすることと同じように考えていくことができますので、安心してください。)

 これでも、まだ記号が多すぎますね。
 「ある点を通る曲線を表す式」ということなんですから、その点の の値をこの式に入れてしまえば、記号の数は一気に減らせるはずです。
 図−3にはありませんでしたが、=1,=1 の点を通るなら、式の形はこのようになります。

a+b+c+d+e+1=0

 式の形がかなりおとなしくなりました。
 また、図−3に示した円は、=−5,=0 の点を通っていますから、この円については次の式を書くことができます。

25a−5d+1=0

 式の形がこれくらい簡単なものにできたなら、a,b,c,d,e の値を求めることも、それほど難しいことではなさそうです。
 それでは、話をまとめていくことにしましょう。

+bxy+c+d+e+1=0

 この式で、a,b,c,d,e の値が分かれば、1つの二次曲線を表す式が分かり、つまり、1つの二次曲線が決まります。
 上の式に二次曲線が通る点の の値を入れれば、この式は、a,b,c,d,e で表されるものになりました。
 ここには、求めたい値が5つありますので、値を求めるためには、これらを含む式が少なくとも5つ必要になります。なぜならば、a,b,c,d,e の値を求めるということは、たとえば、a=1,b=2,c=3,d=4,e=5、というような、5つの式を求めることと同じ意味があるからです。
 したがって、

「1つの二次曲線を決めるためには、少なくとも5つの点を決めればよい」

ということが分かりました。

 また、このことから、「異なる2つの二次曲線どうしの交点は、4点以下である」ということが言えます。(よろしければ、もう一度だけ、図−3を見てください。)
 「2つの二次曲線が、5つの交点を持つ」としたならば、その2つの二次曲線は全く同じものになってしまい、ある意味では、無数に交点がある、ということになってしまうからです。

 難しいことばかりを書いてしまいましたが、やっと話にまとまりがつきました。これで一安心。



 …と思っていたのですが、実は、かなり大きな見落としがあったことに気が付いてしまいました。
 その見落としの一端については、本文中にも少しだけ書いてはいるのですが、ここでさらに話を長引かせることは、やめておきましょう。
 この話は、第2話「見た目はちがうけど」でまとめてみたいと思います。
 それではまた。


目次に戻ります。